CPなしごっちゃ煮


一応時系列。


(赤崎くんと世良くん)

放たれた矢は見事、的の中心に突き刺さる。

「最近、すっげぇ雰囲気がぎすぎすしてるから疲れる…」

はぁぁあ、と長いため息をはきながら首を鳴らすのは、赤崎の先輩の世良。
疲れているとはいっても、その弓の精度は落ちないものだからすごいと赤崎は思う。
もちろん本人には言ったりしないけれど。

「でも、若手が動きやすくはなったっしょ」
「まぁ…なぁ」

新しい典侍、達海猛。
東の面々の男女は几帳で分けたけれども、自分は几帳なしで、直接全員の前に姿を現した。
しかも髪はぼさぼさ、服に至ってはいつの時代のものを引っ張り出してきたのか、くたくた。
それだけでもかなりとんでもないのに、さらに年長の人間たちを怒らせるようなことばかり言って、掻きまわしていった。
ちなみに現在進行形で。

年長の者達は激怒した。
だけど若い自分たちは、どこか。
あぁやってくれたな、といった気持ちになった。

「次の蹴鞠か歌合か、出れるようになったし」
「うん」

なんと達海の遊びみたいな命令をこなしていたら、若手の多くが次の蹴鞠大会や歌合の選手に抜擢されたのである。
それは今まで年功序列に従っていた面々からすれば、よくも悪くもあることだった。
そして現在、負けまくっている。

「あー…椿まで選ばれちゃってるもんな」
「あいつたまにはすごいでしょ」
「だなぁ…あ、王子帰ってきてくれたからさ、ちょっとは雰囲気ましになった気がする」
「そうですね」

女のくせに、自分のことを王子と呼ばせる同じ派閥に属している女官。
そしてその名前の通りというかなんというか、老若男女が惹かれ、光源氏をもじって光の君などと呼ばれていることもある。
まぁ祖先を辿れば皇族と渡来人との血をひくとのことで、謎のオーラや気品があるのも納得しているわけだが。

「どうなんのかなぁ、俺達」

どこいくんだろ、と珍しく気弱に世良が言う。
だが放った弓は中心に刺さった。

「進むしかないんじゃないすかね」

がむしゃらに。
今まで守るだけに徹していたのをやめて、突き進む。
ただそれだけ。

がむしゃら




(石神さんと丹波さん)

「ひーまー」
「俺は暇じゃなーい」
「つれないなー」

灯を頼りに、こんな真夜中にまで筆を走らせる友人の背中に、邪魔にならない程度にもたれかかる。
まだ春先なのに、誰も見てないうえに熱いからと袿姿になったりなんかして、冷えてしまっている。

「丹さーん、冷えてるよー背中」
「中身は熱いのー」
「風邪ひいても知らないからな、俺」
「そういうお前だって、俺につきあって起きてなくてもいいんだぞー」
「今日は帰りたくない気分なんですー。言ったでしょ、今日は泊めてって」
「聞いた聞いた、んで、いいよとも言ったよ」

帰りたくない気分というのは嘘じゃない。
一割か二割くらいの嘘だ、多分。 本当は、帰ったらやばい男…前から断り続けているのに粘着質に追い回してくる男が待ち構えていると仕事仲間が教えてくれたから帰ったらやばいのである。
男を避けるために丹波の部屋に泊まるのも珍しくはない。
だが今日はどこか不安で、寝つきが悪いだなんて少し恥ずかしくて言えない。
石神のついたため息に、丹波がくすりと笑いをこぼす。
つきあいが長いから、きっともうばれてしまっているんだろう。
こういうことはたまにあるから。
だけどあえて、なーに、なんかおもしろいものでもあった?と石神は尋ねる。

「今回、新しい登場人物出すんだ」
「へぇ」

なんとくなく、この流れは。
そう石神が思うのと同時に、丹波が振りむいて石神を見て、にやりと笑う。

「なぜか癖の強い男どもから想いを寄せられる女」
「それ、完璧に俺だよね」
「そーでーす」

ぎゃはー!と丹波が笑う。
いつかはこうなる運命だとは思っていたけど、まさか今、それで少し困っているときに言われるとは。
今日は本当についてないと石神は思う。
男から始まり、友人の描く物語の登場人物にされる。

「まぁまぁガミ、最後まで聞きなって」
「んー?」
「その女はね、まぁ遊びまくるんだけど」
「…うん」

耳が痛い、ちょっとだけ。

「なんと、ある日素敵な殿方が現れて本気で恋をするのです!」
「へぇ」

どんな男?と丹波に尋ねると、それは内緒と返される。

「像は安定はしてるけどね、まだ書いてる途中だから」
「そりゃさごかしいい男なんだろうね?」
「めっちゃいい男に決まってんじゃん」

俺の書く話の中で幸せにならない主要登場人物はいない!と丹波。
あれ俺主要登場人物なんだ?と石神が尋ねると、いたずらっぽく丹波は笑ってごまかす。

「まぁいいや、できたら見せてよー」
「はいはい」

そしてまた静かになって、筆の走るさらさらという音だけが部屋を支配する。
そんな中でいつの間にか石神は眠りに落ちていた。

気になる予告

丹波さんは今をときめく同人作家。
というのも平安時代紙は貴重で、文才がある人に位の高い人から与えられるものだったそうで。
で、当時読まれていたもののうちのひとつが源氏物語なんですが、これ実は3次元萌えの同人誌だったらしいです。
丹さんならボギブラリー豊富そうだから違和感無いかなと思って。