゛頭゛を脱げば、かいた汗が冷えてすっとする。
「ふぅ」
奇妙な縁でもあったのか、さして有名でもない大学のスポーツ科で体操専攻だったからか、はてまたサークルでサッカーやっててそこそこプレイできてたからか。
卒業してから俺はETUというサッカーチームのマスコットキャラの、中の人に就職した。
ものすごい体力は必要だけども、この就職難の時代、職があるだけでも随分恵まれてたと思う。
実際、就職が決まらないまま卒業してしまって、アルバイトをしてる友達だっている。
「あー…」
胴体を脱いで、手足も付けてるものを外して、選手が誰もいなくなったシャワールームで汗をながす。
フロントというか、会長となぜか笠野さんが「パッカくんの正体はチームの人間にも秘密だ!」という指針を出してるもんだから、俺の正体がばれるわけにはいかない。
今日も一人、シャワー浴びて着替えて、一人電車に乗って家まで帰るわけだ。
というのはいつものことで、今日はETUいいとこまで行ったし、祝い酒を買いに行くことにした。
就職してから3年、今年はいいことが起こりそうな気がする。
鼻歌こそ歌わないけどそこそこに気分がよくて。
そんなんだからよく見ないで入ったコンビニで、おもいっきり人にぶつかってしまった。
「すんませ…げっ」
「あ?」
なぜ。
どうしてこの男が深夜のコンビニから出てくる。
「ねぇ今あんた、俺見てげって言ったよね?俺と知り合いじゃないのに」
瞳孔開いてんじゃないか?と疑いたくなるような恐怖の表情の持ち主、持田。
言わずもがな、今日のETUの対戦相手である東京ヴィクトリーの主力選手。
パッカくんモードになっても、正直対抗できるかどうかわからない。
しかしヤバイ、バレるわけないのに身の危険を感じる。
「人違いしまして…すんません」
「ふうん…ま、いいけど」
店内に早足で入って、なんとか逃げれた。
「なぁ」
「ぅおあ!?」
でもそう思ったのもつかの間で。
いつの間にか持田は後ろに立っていて、俺の肩を掴んでいた。
「もしかして、ETU関係者?」
その悪魔の笑みに、河童のお面を装備していなかった俺は陥落してしまったのだった。
パッカくんになると、パッカくんモードになって怖いもの知らずになるというかなんというか狂犬化するというか、まぁそんな感じで。