「ちょ、熊谷殿落ち着いて…っ!」
「いやー私全然落ち着いてますよ?」
今日も普通に中国に仕事で来ただけだ。
あああ、なのになぜ、私は今。
「さて、既成事実作りましょうかね?」
熊谷殿にせまられてるんだろう。
しかも、私、女装姿。
いや、ちゃんとした経緯は覚えてる。
覚えてるけど…現実味なさすぎ…というか、正直今となっちゃあんまり思い出したくない。
てか今の状況がやばすぎるから、あ、頭がまわらない!
こんなことになったのは、さかのぼること30分前のこと。
中国へ来る度に見慣れていく、主達の喧騒に若干の苦笑を浮かべる。
これがいつも通りの私の行動。
で、
『ふふっ、毎度毎度、元就様がご迷惑おかけいたします』
『いえ…うちの殿の方こそ、いつもご迷惑おかけして申し訳ない本当…』
毛利家一門衆、熊谷信直殿との会話が、いつもの如く繰り広げられる。
それが常だった。
常だった、ってことは今日はそれがなかったということで。
「福留殿!!」
「あれ、熊谷殿。どうしたんですか、そんなに慌てて…っ!?」
「理由は後で説明しますから!」
「ええぇ!?ちょ、な、ど、えぇ!?」
「あぁ…」
ちょっと待ってください、なんで私どこかへ拉致されてるんですかってか俵担ぎされてるんですか!
が詰まった言葉はどうやら届いた。
「我慢です!」
「ぎゃぁぁあああ!?」
いや、届いてなかったね、うん。
私を俵担ぎしたまま、熊谷殿は走る。
いつもの落ち着いた物腰は一体どこへ。
「熊谷さま!こちらでございます!」
「ご迷惑おかけいたします!」
「滅相もない!我ら全力で事に当たらせていただきます故!」
「よろしく頼みます!」
「お任せ下さいませ!」
女中さんと話してるのか…ってか静かな熊谷殿にしては珍しく熱い会話だなー…しかも女人と。
なんて思った瞬間、
ぽいっ
おそらく、先程話していた女中さんの部屋の中に投げ込まれた。
そしてすぱん、と障子は閉められる。
まるで私の退路を断つように。
「「いらっしゃいませ福留さま!」」
「え、ぇぇ、こ、これは…?」
しかも投げ込まれた先は、一人の女中さんじゃなく、沢山の女中さんがいる部屋だった。
「さぁ、まずはお召し変えをいたしましょう!」
「…え?えぇぇぅぁああ!!?」
数人がかりで押さえ付けられて、服を脱がされて褌一丁にされてしまった…。
そして女物の着物(しかも絹地で高そうなやつ)に着替えさせられ。
さらには薄化粧を施され、女物のかつらを被せられ。
その間、約20分程。
準備が良すぎる気が…じゃない!
「あ…の…これ、は、」
「大丈夫です福留さま!誰が見てもどこかの姫にしか見えませんわ!」
「あぁ…っなんてかわいらしい…っ!」
鏡もないからどうなってるかわからない(きっと、むさい男が無理矢理娘さんの恰好した感じなんだろうな)
いや、それ以前にあの、私、男なんですけど…?
「さ、熊谷さまがお待ちでございます」
「あ…はぁ」
熊谷殿…返答次第によっちゃシめたる。
そう思っていたら、女中頭のような人が話しかけてきた。
「福留さま…どうか熊谷さまをお助けになってくださいませ…」
「え?」
「熊谷さま、実は今日縁談がお有りなのですよ」
「縁談?」
「えぇ…」
「いや、だからって何も私が女装させられることないんじゃ…」
「熊谷さまは、既に心に決められた方がいらっしゃるようなのです」
しかも家柄も釣り合うそうで、いつも自分の主張をあまりならさないのに、絶対に娶りたいとおっしゃってて…。
「だから私たち一同もご協力さしあげたいのです」
その言葉を聞いて、よく考えてみる。
心に決めた人がいる、けど今日は縁談。
と、いうことは…。
「…成程、私は熊谷殿の思い人の代役ですね?」
「…そうなります」
普通に毛利の女中さんに頼めばいいのに…なんて思うけど、熊谷殿にはいつもお世話になってる。
…よし。
「最初は訳がわからなくて嫌でしたが…この福留、ご指名とあらば熊谷殿の恋路に微力ながら助太刀させていただきましょう!」
「あぁ…っ!!」
にっこり、ちょっと表情に影を落としていた女中さんを励ますように微笑んだら何人か倒れてしまった。
あれ…?
そんな時、間がよく障子が開く。
「あ、熊谷殿」
なぜか目を丸くしたあと、目を伏せ、口元を押さえている熊谷殿の元に歩みよる。
「福留殿」
「はい?」
「い、」
「い?」
刹那、がし!と肩を掴まれ。
「行きましょうか福留殿ォオ!!」
「うやぁぁああ!!?」
そして、毛利軍の皆様が「なっ、何故熊谷殿が戦状態に…!?」だの「誰かぁぁあ就忠様を呼んでぇえ!!」だの「被害は最小限に押さえろぉお!」だの、いろんな叫びを聞きながら今の姫抱き走行状態に至る。
「くま…っ、熊谷殿っ!なんか色々と恥ずかしいんですけど…っ!」
「すみません…今は、女性の振りを、していて、下さいませんか…!」
「あ…」
お願いします、と。
そう言いつつ、私を抱えたまま全力疾走する熊谷殿の息は荒い。
私もがくがく揺さぶられて随分噛んでしまっている。
そんな中での会話で、私は熊谷殿の思い人の代役なのを思い出す。
…そうだな、代役ならばちゃんと代役らしくしないと。
「…えと、熊谷殿」
「はい…!?」
「信直、さま?」
「…!」
「え、え、何か私間違えて…?」
「つ、続きは後にしましょう!」
「へ…?」
「行きますよ…!」
その瞬間、スッパァァアアン!!と障子が足で開けられる。
行儀悪いですよ、熊谷殿…。
「おぉ熊谷殿…やっと来られたか、あと行儀が悪いですぞ」
「姫を何刻待たせればよいのじゃ…あと珍しく行儀が悪いのう」
「む、何か抱えておるぞ?」
そこには多分毛利の老臣方が沢山いて、奥の方には…多分、熊谷殿の見合い相手の姫がいた。
てか、皆様の視線いたい…。
「なんと!」
「熊谷殿…そこの姫は一体どちらの姫なのじゃ」
「失礼ながら」
凛とした声が響く。
熊谷殿、早くも息を整えて、一声で黙らせてしまった。
「私はこちら姫を娶るつもりですので」
「な…っ!」
だから自分に見合いなんていらない。
そう熊谷殿は断言した。
「熊谷殿…我らが姫の想いを無下にするおつもりか」
「それはそちらの姫の一方通行な想いでしょう」
「なれど見合いとはそういうもの!」
「ですから…はぁ…」
熊谷殿の視線がこちらを向き、私にしか聞こえない小声で、
少し、失礼します
そう言った、すぐ後。
「んっ…!?」
姫抱きのまま、接吻された。
あれ、接吻?
接吻?
あれ、私男で…熊谷殿も男で…あれ?
驚いてるうちに、今度はぬらりとした感触がし始める。
舌、入って、る
その事実に気付いた時、私、茫然。
周りも茫然。
てか、苦しい、けど、後頭部が押さえ付けられてて逃げれ、ない。
「…ぷ、はぁ…っ!」
「…恋なら間に合ってますので」
にじんだ視界に、唾液が私と熊谷殿を微かに繋いでいるのが見え。
そしてその繋ぎが消えた時に熊谷殿は私…というか、意中の相手しか娶らないということをはっきり示していた。
「私は何があろうと、この姫を娶るつもりです」
…邪魔するならば、例え家老の方であろうとも容赦いたしませんよ。
そう低い声で宣言し、家老の方々を睨みつけて部屋を退室した熊谷殿はちょっと格好よかったけれど。
「あの、熊谷殿」
「なんですか、福留殿」
「なぜ私、おそらくあなたの寝具に放り込まれてるんですか?」
「いやぁ、毛利の家老は頭が固い方が大多数でしてね…既成事実作らないと」
「え、あの、ちょっと待てコラ熊谷殿」
あなた、確か心に決めた人が。
「あぁ、貴方ですけど」
あれ、誰だと思ってたんです?
そして冒頭に至る。
「う、みに沈めこの破廉恥野郎ぉぉお!」
君に恋した時の台詞ハウツー
(恋なら間に合ってます)
真剣味を効かせば効果覿面、雰囲気作りにもよいでしょう。
しかしいきなりの急展開に持ち込むにしては危険ですのでTPOを考えて使いなさい。
熊谷信直(毛利)と福留隼人(長曾我部)
…………………………
あとがき
まず。
トップバッターから変な小説ですみません…っ!!(スライディング土下座!
ゲフンゲフン…!
ええと、今回はこのような素敵な企画に参加させていただき、本当にありがとうございました!
もう創作だからって調子にのって、ひっちゃかめっちゃかにしましたが…←
お楽しみいただけたでしょうか。
またこんな素敵な企画があれば是非とも参加したい所存です^^
ありがとうございましたー!
豆太(from 留置)