市内最強のワルから県下最強のワルになっても変わらないことがある。
『いくらお前が強くても、京西の藤原には勝てない』
(…むかつくんだよ)
京西といえば、全国でも有名な進学校だ。
(要は、俺やダチみたいな馬鹿とは関係ない世界に住む奴なのだ)
そんな進学校に通うにもかかわらず、空手に剣道、柔道に…と。
全て、ど偉い域に行ってるらしい。
まさに環境にも才能にも恵まれた天才。
俺とは逆だ。
俺は貧乏で(それこそ、今日の晩飯に困るくらい)、馬鹿で。
とりあえず、むかつくからシメる、なんて安易だけど。
それを理由に、現在尾行中。
(…なかなか尻尾見せねぇな)
油断も隙ないのだ、こいつには。
まさか、ばれて…?
いやいや、俺がばれるはずないだろ。
けど、俺の方が先に音をあげそうだ…。
なんせ、20分も歩きでつけてるから。
その時、俺にチャンスが訪れた。
はくしゅん!と、奴が大きなくしゃみをしくさったのである。
もちろん、隙が出た。
…今だな、
「…おい、お前が京西の藤原か」
「…なにか?」
また、くしゃみ。
こいつ、隙出しっぱなしだ。
やるなら今だ、本当。
「お前、護身術とかで強いからって偉そうに「あぁ、お前が海棲の袴田か」
「え、」
いままで名前なんて当てられたことがないし、大体、
「俺を潰しにでも来た?」
「、っ」
なん、だ、この、圧迫感。
なん、か、やば、
「…うち入る?」
「…は?」
「お茶くらい出すからさ、なんでこうなったか経緯くらい教えろよ」
「お、おぉぉお!?」
何言ってんだお前!
俺お前潰しに来たんだぞ!?
わかってんのに何故自分の家に入れる!
「軽く殺気飛ばしただけで固まってる奴くらい、いつでも倒せるし?」
「てっ…めぇ…!」
完全に、なめられている。
なんだこいつ…っ!
てか、絶対俺が県下最強のワルだと知っててこの挑発かよ!
この野郎…!
「あぁ、パッツもつける」
「ぱ、」
ぱっつ、パッツ、マーゲンの、あの高い高い値段のアイス(買ったら破産しちまうくらいの値段だ)
「い、いいのかよ…高いんだぞ、あれ」
「客には良いもん出すもんだろ?」
「う…」
なんだこの、うわ。
嬉しいけど、虚しくなってくるこれ。
なんで俺はアイスにお茶を馳走になってんだよ。
断れ、そして一発殴れ、俺。
それだけで終わりだ。
「で?食べんの?」
「…た、食べるに決まってんだろ!」
鬼に神を喰われたやうに
(逃げれ、ない)