今日は京西高校の運動会。
そしてそんな京西高校の敷地内部に、俺こと袴田祥はいた。
「…むー…」
たっぷりと中身が詰まった、三段重ねの重箱を阿保みたいに両手に持って。
そもそも、なんで他校生である俺がこんな場所にいるかというと、奥深い理由があるからだ。
「…せっかく弁当作ってやったのに」
先日、うっかりすっかり何故か恋人になってしまった男――藤原正秋の弁当を持ってきたからだ。
正秋の家には、今月も当然の如くあいつの親は帰宅する予定がなく、正秋が良いって言うから材料を自由に揃えて、奴の家の台所で今日の朝に作った。
でも、持ってきたのはいいけど、肝心の待ち合わせ場所に辿りつけない。
「…うー…」
この歳で迷子なんて…野郎共に示しがつかない。
あー…どうしよう。
「あれまー大きい子が迷子になっとる」
「…あ?」
結構きょどってたのか、ものすごくカチンとくるようなことを言われた。
俺だって好きで迷子になってるわけじゃねぇし、俺を誰だと思ってやがると睨みを効かせながら振り返った、ら。
「…きもの?」
「え」
着物を着た女がいた。
でも声は女ほど高くなかったような…?
そう考えてたら、いきなりそいつが話しかけてきた。
「ちょっ、ねぇ君!」
「…んだよ」
「俺が、見えとるん?」
「は?見えて当たり前だろ」
一体何を言ってるんだろう。
やばいな、ちょっと変な奴に当たっちゃったかも。
少し、こっそりと後ずさりしたら、そいつがとんでもないことを言った。
「でも俺…幽霊なんやけどなぁ…」
「は?」
そう思った瞬間、俺のお腹には腕が突き刺さっていた。
…いや、正しくは、
「とっ、とお…っ!?」
通り抜けて、いた。
「な、言うたやろ?」
「な…っ…えぇぇえええ!?」
「ええ反応やわーというか、ゆき以外に見られたの初めてかもしれん」
けたけたと俺を見て笑うこいつは、別に身体が透けてるわけでもないし足がないこともない。
服が変なのを除けば、普通の人間と全く変わらない。
「てか、ぼんよ」
「は?ぼん?」
「あー…坊主って意味や」
「な…俺は餓鬼じゃねぇっ!」
「すまんすまん、ぼんは行きたい所があったんとちゃうか?」
「あー!」
すっかりさっぱり忘れていた。
「ど…どうしよ…」
「なぁ、ぼんが俺のこと見えるのも何かの縁や、俺がぼんの行きたい所まで案内してあげるよ?」
「え」
こういうのって…棚からぼたもちって言うんだっけか。
「…じゃあ、お願いする」
「りょーかい!」
(どこで待ち合わせしとん?)
(えと…このメモに書いてる場所)
(なんや、俺と同じ目的地やんか!よっしゃ、着いてきぃ!)
(あ、こら待てー!)