「…なんでお前がいる」
「別にいたっていいだろ、お前には関係ないじゃん」
祥との待ち合わせ場所は学校の敷地内で知る人のみぞ知る空き地。
男同士が仲良く飯食ってるのもあれだからわざわざ僻地を選んだ。
なのに何故か先客…同じクラスの広瀬がいた。
「…用がないなら余所へ行け」
「用がないのにこんな僻地にいたりしないよ」
そうとう無愛想…というか、広瀬という男はクラスでの行動を見ているに人嫌いのようだ。
言うまでもなく、クラスでも相当浮いている。
全く、なんでこんな奴とこんな僻地で一緒にならなきゃならないんだか。
そう思って溜息をついたら、騒がしい声が聞こえてきた。
「ちょ…、待てよ…っ!早いっ!」
「ちゃんと追い付いとるけん大丈夫やてー」
「あぁぁもうこの脳天気馬鹿ぁっ!」
祥…と、あと誰か。
とりあえず…なんか、かなりの速さでこっちに向かってきているらしい。
そうしてすぐに、声の持ち主達が姿を現した。
「ゆきー!!」
最初に現れた人物は、ばしゅん!と目の前を人外のスピードで通り過ぎ、なんとあろうことか広瀬に向かっていった。
「っ、…う、まさあきぃ…」
「だ、大丈夫か…」
続いて、顔を真っ赤にした祥がよろよろとやってきた。
息もかなり荒いし涙目だ。
…不謹慎だがあれだ、本能に訴えかけてくるところがある。
とりあえずかなり苦しそうだったから背中をさすって落ち着かせながら、なんでそんなに疲れてるのかを聞いてみることにした。
「どしたの」
「あ…あいつが走…いや…飛ぶの…早くて…待てーつっても…待ってくんないし…」
「…飛ぶ?」
あいつ、というのは広瀬に向かっていった人物なんだろうが…飛ぶ?
意味がわからなくて、振り返って広瀬の方を見たら、
「…」
確かに、浮いて、いた。
和風な渋い感じの濃い橙の着物…小袖を粋に着こなした髪の長いその人物は、その脚を宙に浮かせていた。
「…なんだ、じろじろと」
流石に固まっていたら、広瀬に睨まれたが…これだけは言わせていただきたい。
「広瀬…その、着物着た人、浮いてないか…?」
「!?」
そう言ったら、目をカッと見開いた広瀬がこっちに近づいてきて肩を揺さぶってきた。
「お前…見えるのか…?」
「は…?」
「見えるのかと聞いている!」
「っ、見えてるから言ってるんだ!…離せ」
「っ…すまない」
少し殺気を込めたらはっとしたように広瀬は俺の肩を離した。
驚いた…広瀬ってまさかの激情家タイプなのかもしれない。
「…正秋」
「ん」
くい、と祥が体操服の裾を引っ張ってきたので視線を合わしてやる。
「ええと…その着物着てる奴、幽霊…」
「え」
「う…その、俺昔っからレイカンってやつが強い…らしくて、さぁ…多分」
「…そっか」
祥はまさかの電波系だったのか、なんて一瞬思ったが、確かに幽霊と言われると納得できる所がある。
「なぁ広、瀬…?」
一体全体どういうことなんだ、と広瀬に聞こうとしたら、着物の人を抱きしめていた。
「躬宣…ッ…!」
「あのー…」
「あ、大丈夫大丈夫ー感慨に打ち震えとるだけやから」
「はぁ…」