(星カン編)
※昌洙がだいぶ日本語慣れしてるといったかんじの文です。
国に帰ることになったと告げられた。
「若手のイクセー、ダッテ」
昔と比べると随分なめらかになった日本語で、昌洙は続ける。めずらしく夕飯をかっこまないと思ったら、いつ言おうかとタイミングを伺っていたらしい。
「断る、ムズカシイ」
代表時代から世話になっている、今は韓国サッカー界の重鎮となった人物から頼まれたらしい。
「…いつ帰る」
「あとハントシ」
実感がわかない。ずっとここにいるものだと、心のどこかで思っていたに違いない。心臓がプロアスリートにあるまじき動きをする。汗がじわりとにじむ。
一瞬、帰るな、なんてくさいこと言いそうになった。うっかり口に出せればいいのにと星野は思う。が、残念ながら星野はそういう風にはできてないし、いつだって本音は夜に熱を交わす一瞬、でるかでないか。
(テラコム編)
寺内の家。昼食をとって、もうすっかり部屋に馴染んでしまった小室用のクッションを枕に、ごろごろしながら持ってきた雑誌をめくる。「デキる男のエプロン特集!」という大きな見出しが、小室の目に入った。
「牛になるぞ」
「なりませんよー」
どうだかなと笑いながら、寺内がソファーに腰掛ける。食器を洗い終えたらしい。小室が料理を作ったときは、寺内が食器を洗う。逆もまた然りで、先輩後輩関係抜きでやっている。
「なに読んでるんだ?」
問いかけてきた寺内に、エプロン特集をと返そうとして、はたと小室は止まる。特集内にある、ロングカフェエプロン。寺内だったら、きっとかっこよく着こなしてしまいそうだと思う。
くそう、かっこいいなぁもう。
「こら、止まらない」
「あ、わ、すみません」
考えはじめると、ついうっかりそっちに集中してしまうのが小室の悪いくせだった。寺内がそういうのを笑って流してくれる人でよかったと、いつも小室は思う。もちろん、今回も。
「エプロン特集?」
「これ、テラさんに似合いそうだなって」
「へぇ…あ、そういえば」
ソファー横のマガジンラックから、寺内が一冊の小さな本をとり、小室に渡した。タイトルは、「誰でも簡単!おうちカフェ特集」。
「この前偶然見つけてな、どう?」
「めっちゃいい感じっす!あざっす!」
(岩近編)
川崎の近藤の家。いつものオフ通り、夕飯を食べた後は、近藤と岩淵はリビングでだらだらしている。見ている番組について話したり、なんの他愛もない話をしたり。
「あ」
「どした?」
岩淵がテレビを見て声を出した。基本、岩淵という男はちょっと無口なので珍しいので、一体そんな岩淵に声を出させてものはなんだと、近藤は読んでいた雑誌から目をあげて、テレビを見る。ちょうど、結婚情報誌のCMが終わったところだった。
岩淵が近藤になにを言ってくるのかが予想できて、近藤は溜息をつく。大変残念なことに、慣れてしまった。
「もし男同士が結婚するなら、服はどうなるんでしょうね」
「…二人ともタキシードじゃね?」
実際、海外の同性婚のニュースに使われていた写真は、そういうものだったように思う。
「…ドレスも、いいと思うんですが」
「時々俺はお前が宇宙と交信してんじゃないかと思う」
「え」